実験を重ねて、データを集めていって、そして、ついに
江崎たちは、加える電圧を増やすと逆に電流が減るとい
う、負の抵抗(* 抵抗は電圧と電流の比で表され、普
通は電圧を増すと電流も増していく)を持つ新しいタイ
プのダイオードを作る事に成功したんだ。
江崎たちはこの成果を、1957年の秋に開かれた「物
理学会」で報告し、翌年には米国物理学会誌に投稿、続
いてベルギーのブリュッセルで行われた「国際固体物理
会議」で発表し、世間に問うことになったんだ。
しかし、日本での最初の反響は極めて冷淡なもので、ほ
とんど無視されたも同然の扱いだったんだ。
しかし、トランジスタを発明したショックレー氏が絶賛
したため、ようやく注目されるようになり、1973年
にノーベル物理学賞を受賞した。
このエサキダイオードの発見は、後の半導体産業の発展
へのきっかけとなったんだ。
エサキダイオードは、従来のダイオードと違い、トンネ
ル効果を利用している。
トンネル効果の場合、電子は壁を通り抜けはしない
けれど、その電子の持つエネルギーが”波”として
伝わっていくため、時間がとても短くて済むんだ。
そのため、伝導電流によるものと違って電子の走行
時間の影響がないんだ。このため、超高速スイッチ
やマイクロ波の発振に用いられるんだよ。
このため、高速計算が必要なコンピュータなどに使
われ、産業全体にも影響を与えたんだ。 |
終わり
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