この測定を始めてから約1ヶ月が経過した時、鈴木はリンの
濃度が高い結晶に、異常な現象が現れるのに気が付いたんだ。
P−n接合というのは、順方向に電圧を加えると電流が流れ
やすく、逆方向ではほとんど電流を通さないという性質を持
っている。(もう、勉強したよね!) しかし、鈴木がこの
実験のデータをグラフに書いてみると、順方向より逆方向の
方が電流が大きく、しかも順方向電流の特性にコブのような
カーブが生じる。
「こんなことがあり得るはずがない」と、鈴木も初めは半信
半疑だったけれど、何度やっても結果は同じだったんだ。
この事を、すぐに江崎に報告した。江崎もやはり当初は「何
かの間違いじゃないか?」と思った。しかし、鈴木は「これ
は、現象として出すことができます。」と言ったんだ。
「それじゃあ、ブラウン管に出してみよう」という江崎の指
示で、鈴木がブラウン管に波形を出した。2、3回テストを
繰り返し、測定回路を確かめたが間違いはない。江崎も、以
上を認めた。
この異常を認めた時、江崎は後の「エサキダイオード」発見
の入り口に立っていたんだよ。
続く
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